令和(れいわ)3年度(ねんど)  学力(がくりょく)検査(けんさ)問題(もんだい)

国語(こくご)

注意(ちゅうい)

1   監督者(かんとくしゃ)の開始(かいし)の合図(あいず)があるまで,この問題(もんだい)冊子(さっし)を開(ひら)かないでください。
2   問題(もんだい)は,1ページから10ページまであります。
3   解答(かいとう)は,全(すべ)て解答(かいとう)用紙(ようし)の所定(しょてい)の欄(らん)に記入(きにゅう)してください。
4   解答(かいとう)用紙(ようし)の※(こめ)印(じるし)の欄(らん)には,何(なに)も記入(きにゅう)しないでください。
5   監督者(かんとくしゃ)の終了(しゅうりょう)の合図(あいず)で筆記(ひっき)用具(ようぐ)を置(お)き,解答面(かいとうめん)を下(した)に向(む)け,広(ひろ)げて机(つくえ)の上(うえ)に置(お)いてください。
6   解答(かいとう)用紙(ようし)だけを提出(ていしゅつ)し,問題(もんだい)冊子(さっし)は持(も)ち帰(かえ)ってください。

1

一(いち)

  次(つぎ)は、【文章(ぶんしょう)】と、【文章(ぶんしょう)】に基(もと)づく【ポップの下書(したが)き】、【ポップを作成(さくせい)するためのメモ】である。

(1)   次(つぎ)の【文章(ぶんしょう)】を読(よ)んで、後(あと)の各問(かくとい)に答(こた)えよ。句読点等(くとうてんとう)は字数(じすう)として数(かぞ)えること。

【文章(ぶんしょう)】

  何(なに)か迷(まよ)いが生(しょう)じたときや、方向性(ほうこうせい)を見失(みうしな)ったときなどは、自分(じぶん)の心(こころ)の声(こえ)に耳(みみ)を傾(かたむ)ける必要(ひつよう)があり、そのためには一人(ひとり)になれる時空(じくう)をもたなければならない。

  日常(にちじょう)生活(せいかつ)を振(ふ)り返(かえ)ってみればわかるように、だれかと一緒(いっしょ)のときは、目(め)の前(まえ)にいる相手(あいて)のことが気(き)になって、①自分(じぶん)の世界(せかい)に沈潜(ちんせん)することができない。つまり、思(し)索(さく)にふけることができない。SNSでだれかとつながっているときも同様(どうよう)である。

  常(つね)に人(ひと)と群(む)れていると、ものごとを自分(じぶん)の頭(あたま)でじっくり考(かんが)える習慣(しゅうかん)がなくなっていく。②絶(た)えず目(め)の前(まえ)の刺激(しげき)に反応(はんのう)するといった行動(こうどう)様式(ようしき)が常態化(じょうたいか)し、じっくり考(かんが)えることができなくなる。

 

A

  発想(はっそう)を練(ね)るのは一人(ひとり)の時間(じかん)にかぎる。周囲(しゅうい)と遮(しゃ)断(だん)された状況(じょうきょう)でないと、思考(しこう)活動(かつどう)に没頭(ぼっとう)できない。一人(ひとり)になると、自然(しぜん)に自分(じぶん)と向(む)き合(あ)い、さまざまな思(おも)いが湧(わ)いてくる。一人(ひとり)の時間(じかん)だからこそ見(み)えてくるものがある。

  こうしてみると、SNSの発達(はったつ)のせいで、どうしてもつながり依(い)存(ぞん)に陥(おちい)りがちだが、何(なん)としても一人(ひとり)でいられる力(ちから)をつける必要(ひつよう)があることがわかるだろう。

  自分(じぶん)と向(む)き合(あ)う静(せい)寂(じゃく)な時間(じかん)が気(き)づきを与(あた)えてくれる。どこかで感(かん)じている焦(あせ)りの正体(しょうたい)。毎日(まいにち)繰(く)り返(かえ)される日常(にちじょう)への物足(ものた)りなさ。どこか無理(むり)をしている自分(じぶん)。日(ひ)頃(ごろ)見過(みす)ごしがちなこと。どこかに置(お)き去(ざ)りにしてきた大切(たいせつ)なこと。そうしたことを教(おし)えてくれる心(こころ)の声(こえ)は、一人(ひとり)になって自分(じぶん)の中(なか)に沈潜(ちんせん)しないと聞(き)こえてこない。

 

B

  今(いま)の時代(じだい)、だれにも邪(じゃ)魔(ま)されない一人(ひとり)の時間(じかん)をもつのは、非常(ひじょう)に難(むずか)しくなっている。電車(でんしゃ)に一人(ひとり)で乗(の)っていても、家(いえ)に一人(ひとり)でいても、SNSでメッセージが飛(と)び込(こ)んでくる。そうすると気(き)になり読(よ)まないわけにいかない。読(よ)めば反応(はんのう)せざるを得(え)ない。そうすると、他(ほか)の人(ひと)がどんな反応(はんのう)をするかが気(き)になる。自分(じぶん)の反応(はんのう)に対(たい)してどんな反応(はんのう)があるかが気(き)になって落(お)ちつかない。

  スマートフォンで他(ほか)の人(ひと)たちの動向(どうこう)をチェックする合間(あいま)に、手持(ても)ちぶさただからいろいろネット検索(けんさく)を楽(たの)しんだりして時間(じかん)を潰(つぶ)す。そうしている間(あいだ)は、まったくの思考(しこう)停止(ていし)状態(じょうたい)となり、自分(じぶん)の世界(せかい)に没頭(ぼっとう)することなどできない。

  人(ひと)からのメッセージに反応(はんのう)する。飛(と)び込(こ)んでくる情報(じょうほう)に反応(はんのう)する。そのように外的(がいてき)刺激(しげき)に反応(はんのう)するだけで時(とき)が過(す)ぎていく。

  そんな受身(うけみ)の過(す)ごし方(かた)をしていたら、当然(とうぜん)のことながら自分(じぶん)を見失(みうしな)ってしまう。そんな状態(じょうたい)から脱(だっ)するには、思(おも)い切(き)って接続(せつぞく)を極力(きょくりょく)切断(せつだん)する必要(ひつよう)がある。

 

C

  外的(がいてき)刺激(しげき)に反応(はんのう)するだけでなく、自(みずか)らあれこれ思(おも)いをめぐらしたり、考(かんが)えを深(ふか)めたりして、自分(じぶん)の中(なか)に沈潜(ちんせん)する時(とき)をもつようにする。外的(がいてき)刺激(しげき)に翻弄(ほんろう)されるのをやめて、自分(じぶん)の心(こころ)の中(なか)に刺激(しげき)を見(み)つけるのである。

  もちろん、そのために外的(がいてき)刺激(しげき)を利用(りよう)するのも有効(ゆうこう)だ。たとえば、読書(どくしょ)の時間(じかん)をもち、本(ほん)に書(か)かれた言葉(ことば)や視点(してん)に刺激(しげき)を受(う)け、それによって心(こころ)の中(なか)が活性化(かっせいか)され、心(こころ)の中(なか)をさまざまな言葉(ことば)が飛(と)び交(か)う。そうした自(みずか)らの内側(うちがわ)から飛(と)び出(だ)してきた言葉(ことば)に刺激(しげき)され、さらなる言葉(ことば)が湧(わ)き出(で)てくる。③私(わたし)たちの思考(しこう)は言葉(ことば)によって担(にな)われているため、それは思考(しこう)の活性化(かっせいか)を意味(いみ)する。

 

D

  外的(がいてき)刺激(しげき)に反応(はんのう)するスタイルに馴(な)染(じ)み過(す)ぎてしまうと、スマートフォンやパソコンを媒(ばい)介(かい)とした接続(せつぞく)を遮断(しゃだん)されると、何(なに)もすることがなくなった感(かん)じになり、退屈(たいくつ)でたまらなくなる。そこで、すぐにまたネットを介(かい)したつながりを求(もと)めてしまう。

  だが、外的(がいてき)刺激(しげき)に反応(はんのう)するだけの受(う)け身(み)の生活(せいかつ)から脱(だっ)して、自分(じぶん)の世界(せかい)に沈潜(ちんせん)するには、あえて退屈(たいくつ)な時間(じかん)をもつことも必要(ひつよう)なのではないか。

  近頃(ちかごろ)は退屈(たいくつ)しないように、あらゆる刺激(しげき)が充(じゅう)満(まん)する環境(かんきょう)が与(あた)えられているが、あえて刺激(しげき)を絶(た)ち、退屈(たいくつ)でしかたがないといった状況(じょうきょう)を自(みずか)ら生(う)み出(だ)すのもよいだろう。

  そんな状況(じょうきょう)にどっぷり浸(つ)かることで、自分(じぶん)自身(じしん)の内側(うちがわ)から何(なに)かがこみ上(あ)げてくるようになる。心(こころ)の声(こえ)が聞(き)こえてくるようになる。

  それが、 ア で イ な生活(せいかつ)から、 ウ で エ な生活(せいかつ)へと転換(てんかん)するきっかけを与(あた)えてくれるはずだ。

 

2

E

  そこで問題(もんだい)なのは、「一人(ひとり)はかっこ悪(わる)い」という感受性(かんじゅせい)である。一人(ひとり)でいられないことの弊(へい)害(がい)を考(かんが)えると、「ひとりはかっこ悪(わる)い」といった感受性(かんじゅせい)を克(こく)服(ふく)する必要(ひつよう)がある。

  かつてのように、若者(わかもの)たちが孤高(ここう)を気取(きど)る雰(ふん)囲(い)気(き)を取(と)り戻(もど)すのは難(むずか)しいかもしれないが、学校(がっこう)などで群(む)れる時間(じかん)をもちながらも、一人(ひとり)の時間(じかん)をもつようにしたい。

  一人(ひとり)でいられないのは、自分(じぶん)に自信(じしん)がないからだ。絶(た)えず群(む)れている人間(にんげん)は弱々(よわよわ)しく見(み)えるし、頼(たよ)りなく見(み)える。無(む)駄(だ)に群(む)れて時間(じかん)を浪(ろう)費(ひ)しているということは、本人(ほんにん)自身(じしん)、心(こころ)のどこかで感(かん)じているのではないか。

  一人(ひとり)で行動(こうどう)できるというのは、かっこ悪(わる)いのではなく、④むしろかっこいいことなのだ。一人(ひとり)で行動(こうどう)できる人(ひと)は頼(たの)もしい。一人(ひとり)の時間(じかん)をもつことで思考(しこう)が深(ふか)まり、人間(にんげん)に深(ふか)みが出(で)る。そこをしっかり踏(ふ)まえて意識(いしき)改革(かいかく)をはかることが必要(ひつよう)だ。

 

  (榎本(えのもと)博明(ひろあき)『「さみしさ」の力(ちから)  孤独(こどく)と自立(じりつ)の心理学(しんりがく)』による。一部(いちぶ)改変(かいへん))

問一(といいち)   本文中(ほんぶんちゅう)に  ①自分(じぶん)の世界(せかい)に沈潜(ちんせん)する  とあるが、書(か)き手(て)は、そのためには何(か)が必要(ひつよう)だと考(かんが)えているか。Aの部分(ぶぶん)から十二字(じゅうにじ)でそのまま抜(ぬ)き出(だ)して書(か)け。
問二(といに)   本文中(ほんぶんちゅう)に  ②絶(た)えず目(め)の前(まえ)の刺激(しげき)に反応(はんのう)するといった行動(こうどう)様式(ようしき)が常態化(じょうたいか)し、じっくり考(かんが)えることができなくなる  とあるが、そのことについての具体的(ぐたいてき)な内容(ないよう)を含(ふく)む部分(ぶぶん)として最(もっと)も適当(てきとう)なものを、A〜Eから一(ひと)つ選(えら)び、記号(きごう)を書(か)け。
問三(といさん)   本文中(ほんぶんちゅう)の  ③私(わたし)たちの思考(しこう)は言葉(ことば)によって担(にな)われているため、それは思考(しこう)の活性化(かっせいか)を意味(いみ)する  の説明(せつめい)として最(もっと)も適当(てきとう)なものを、次(つぎ)の1〜4から一(ひと)つ選(えら)び、番号(ばんごう)を書(か)け。

 

1   人間(にんげん)は思考(しこう)することで身(み)に付(つ)けた言葉(ことば)を用(もち)いて生活(せいかつ)しているため、読書(どくしょ)を通(つう)じて出会(であ)った新(あら)たな言葉(ことば)を使(つか)って思考(しこう)を深(ふか)めることで、他者(たしゃ)に対(たい)して説得力(せつとくりょく)のある意見(いけん)を主張(しゅちょう)することが可能(かのう)になるということ。
2   人間(にんげん)は思考(しこう)の手段(しゅだん)として主(おも)に言葉(ことば)を用(もち)いることがあるため、本(ほん)に書(か)かれた内容(ないよう)や表現(ひょうげん)を通(つう)じて感(かん)銘(めい)を受(う)ける言葉(ことば)に多(おお)く触(ふれ)れ、それらの言葉(ことば)の力(ちから)により豊(ゆた)かな感情(かんじょう)を身(み)に付(つ)けることが可能(かのう)になるということ。
3   人間(にんげん)は思考(しこう)の手段(しゅだん)として言葉(ことば)を用(もち)いるため、読書(どくしょ)により他(ほか)の思考(しこう)を知(し)ることで多(おお)くの刺激(しげき)を受(う)け、それ以前(いぜん)とは異(こと)なる視点(してん)から物事(ものごと)をとらえるようになり、より深(ふか)く考察(こうさつ)することが可能(かのう)になるということ。
4   人間(にんげん)は思考(しこう)を通(つう)じて新(あら)たな言葉(ことば)を習得(しゅうとく)するという性質(せいしつ)をもつため、読書(どくしょ)によって新(あたら)しい言葉(ことば)を身(み)に付(つ)けることは、意思(いし)疎通(そつう)の手段(しゅだん)が増(ふ)えることを意味(いみ)し、良好(りょうこう)な人間(にんげん)関係(かんけい)を保(たも)つことが可能(かのう)になるということ。

 

問四(といよん)   本文中(ほんぶんちゅう)の空欄(くうらん) ア ~ エ に入(はい)る語句(ごく)の組(く)み合(あ)わせとして最(もっと)も適当(てきとう)なものを、次(つぎ)の1〜4から一(ひと)つ選(えら)び、番号(ばんごう)を書(か)け。

1  ア  受(う)け身(み)   イ  反射的(はんしゃてき)   ウ  主体的(しゅたいてき)   エ  創造的(そうぞうてき) 

2  ア  主体的(しゅたいてき)   イ  創造的(そうぞうてき)   ウ  受(う)け身(み)   エ  反射的(はんしゃてき) 

3  ア  反射的(はんしゃてき)   イ  主体的(しゅたいてき)   ウ  受(う)け身(み)   エ  創造的(そうぞうてき) 

4  ア  受(う)け身(み)   イ  創造的(そうぞうてき)   ウ  主体的(しゅたいてき)   エ  反射的(はんしゃてき) 

 

問五(といご)   本文中(ほんぶんちゅう)に  ④むしろかっこいいことなのだ  とあるが、書(か)き手(て)は、なぜそのように述(の)べているのか。その理由(りゆう)を、「一人(ひとり)で行動(こうどう)できる人(ひと)は、」に続(つづ)けて、解答(かいとう)欄(らん)に書(か)かれている文字数(もじすう)を含(ふく)め、五十字(ごじゅうじ)以上(いじょう)、六十字(ろくじゅうじ)以内(いない)でまとめて書(か)け。ただし、自信(じしん)、思考(しこう)  という二(ふた)つの語句(ごく)を必(かなら)ず使(つか)うこと。

3

(2)   北山(きたやま)さんの中学校(ちゅうがっこう)の図書(としょ)委員会(いいんかい)では、読書(どくしょ)週間(しゅうかん)の取(と)り組(く)みで、学校(がっこう)図書館(としょかん)の本(ほん)を紹介(しょうかい)するためのポップを作成(さくせい)している。次(つぎ)の【ポップの下書(したが)き】、【ポップを作成(さくせい)するためのメモ】を読(よ)んで、後(あと)の各問(かくとい)に答(こた)えよ。

【ポップの下書(したが)き】

私(わたし)たちに必要(ひつよう)な

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  「一人(ひとり)はかっこ悪(わる)い?」

この問(と)いに、あなたはどう答(こた)えますか?

  この本(ほん)には、「一人(ひとり)はかっこ悪(わる)い」という感受性(かんじゅせい)を克服(こくふく)して、意識(いしき)改革(かいかく)をはかることの必要性(ひつようせい)が示(しめ)されています。

  「孤独」に対(たい)するイメージが変(か)わります。

大切(たいせつ)にしよう!  一人(ひとり)の時間(じかん)を。

 

『「さみしさ」の力(ちから)孤独と自立(じりつ)の心理学(しんりがく)』榎本(えのもと)博明(ひろあき)

 

【ポップを作成(さくせい)するためのメモ】

《工夫(くふう)したい点(てん)》

1   呼(よ)びかけるような表現(ひょうげん)を用(もち)いることで読(よ)み手(て)に直接(ちょくせつ)問(と)いかける。
2   比喩(ひゆ)を用(もち)いることで、難(むずか)しい言葉(ことば)を、分(わ)かりやすく伝(つた)える。
3   語順(ごじゅん)を入(い)れ替(か)えることで、強調(きょうちょう)したり、調子(ちょうし)を整(ととの)えたりする。
4   書体(しょたい)や字(じ)の大(おお)きさを変(か)えて書(か)くことで、見出(みだ)しを目立(めだ)たせる。
5   対照的(たいしょうてき)な内容(ないよう)の語句(ごく)を同(おな)じ組(く)み立(た)てで並(なら)べることで、印象(いんしょう)を強(つよ)める。

 

4

問一(といいち)   北山(きたやま)さんが作成(さくせい)している【ポップの下書(したが)き】は、(1)【文章(ぶんしょう)】のA〜Eのうち、どこを根拠(こんきょ)としているか。最(もっと)も適当(てきとう)な部分(ぶぶん)を一(ひと)つ選(えら)び、記号(きごう)を書(か)け。

 

問二(といに)   【ポップの下書(したが)き】の  孤独    の漢字(かんじ)の読(よ)みを、平仮名(ひらがな)で書(か)け。

 

問三(といさん)   【ポップの下書(したが)き】の  はかる  の―線(せん)を施(ほどこ)した部分(ぶぶん)と、次(つぎ)の1〜4の―線(せん)を施(ほどこ)した部分(ぶぶん)に適切(てきせつ)な漢字(かんじ)をあてるとき、【ポップの下書(したが)き】の  はかる  と同(おな)じ漢字(かんじ)を用(もち)いるものを、1〜4から一(ひと)つ選(えら)び、番号(ばんごう)を書(か)け。

1  体重(たいじゅう)をはかる。

2  相手(あいて)の気持(きも)ちをはかる。

3  問題(もんだい)の決着(けっちゃく)をはかる。

4  時間(じかん)をはかる。

 

問四(といよん)   次(つぎ)の文字(もじ)は  【ポップの下書(したが)き】の一部(いちぶ)である。この文字(もじ)の部首(ぶしゅ)に表(あらわ)れている行書(ぎょうしょ)の特徴(とくちょう)として最(もっと)も適当(てきとう)なものを、次(つぎ)の1〜4から一(ひと)つ選(えら)び、番号(ばんごう)を書(か)け。

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1  点画(てんかく)の変化(へんか)

2  筆順(ひつじゅん)の変化(へんか)

3  点画(てんかく)の省略(しょうりゃく)

4  点画(てんかく)の連続(れんぞく)

 

問五(といご)   北山(きたやま)さんは【ポップを作成(さくせい)するためのメモ】を基(もと)に、【ポップの下書(したが)き】を見直(みなお)した。《工夫(くふう)したい点(てん)》で、取(と)り入(い)れていないことは何(なに)か。【ポップを作成(さくせい)するためのメモ】の1〜5から全(すべ)て選(えら)び、番号(ばんごう)を書(か)け。

5

二(に)

  次(つぎ)の文章(ぶんしょう)を読(よ)んで、後(あと)の各問(かくとい)に答(こた)えよ。句読点等(くとうてんとう)は字数(じすう)として数(かぞ)えること。

【ここまでのあらすじ】小学校(しょうがっこう)五年生(ごねんせい)の少年(しょうねん)は、入院(にゅういん)した母(はは)のお見舞(みま)いにバスで行(い)くようになった。初(はじ)めて一人(ひとり)で乗(の)ったバスで、整理券(せいりけん)の出(だ)し方(かた)を運転手(うんてんしゅ)の河野(かわの)さんに叱(しか)られて以来(いらい)、少年(しょうねん)は河野(かわの)さんのバスに乗(の)るのが怖(こわ)くなった。回数券(かいすうけん)を買(か)い足(た)す日(ひ)、少年(しょうねん)が乗(の)ったバスの運転手(うんてんしゅ)は河野(かわの)さんだった。少年(しょうねん)は、嫌(いや)だ、運(うん)が悪(わる)いと思(おも)ったが、買(か)い方(かた)を注意(ちゅうい)されながらも、どうにか回数券(かいすうけん)三冊(さんさつ)を購(こう)入(にゅう)した。  

 

  買(か)い足(た)した回数券(かいすうけん)の三冊目(さんさつめ)が――もうすぐ終(お)わる。

  最後(さいご)から二枚目(にまいめ)の回数券(かいすうけん)を――今日(きょう)、使(つか)った。あとは①表紙(ひょうし)を兼(か)ねた十一枚(じゅういちまい)目(め)の券(けん)だけだ。

  明日(あす)からお小(こ)遣(づか)いでバスに乗(の)ることにした。毎月(まいつき)のお小遣(こづか)いは千円(せんえん)だから、あとしばらくはだいじょうぶだろう。

 ところが、迎(むか)えに来(き)てくれるはずの父(ちち)から、病院(びょういん)のナースステーションに電話(でんわ)が入(はい)った。

「今日(きょう)はどうしても抜(ぬ)けられない仕事(しごと)が入(はい)っちゃったから、一人(ひとり)でバスで帰(かえ)って、って」

  看護師(かんごし)さんから伝言(でんごん)を聞(き)くと、泣(な)きだしそうになってしまった。

今日(きょう)は財布(さいふ)を持(も)って来(き)ていない。回数券(かいすうけん)を使(つか)わなければ、家(いえ)に帰(かえ)れない。

  母(はは)の前(まえ)では涙(なみだ)をこらえた。病院(びょういん)前(まえ)のバス停(てい)のベンチに座(すわ)っているときも、②必死(ひっし)に唇(くちびる)を噛(か)んで我(が)慢(まん)した。【A】でも、バスに乗(の)り込(こ)み、最初(さいしょ)は混(こ)み合(あ)っていた車内(しゃない)が少(すこ)しずつ空(す)いてくると、急(きゅう)に悲(かな)しみが胸(むね)に込(こ)み上(あ)げてきた。シートに座(すわ)る。【B】座(すわ)ったままうずくまるような格好(かっこう)で泣(な)いた。バスの重(おも)いエンジンの音(おと)に紛(まぎ)らせて、うめき声(ごえ)を漏(も)らしながら泣(な)きじゃくった。【C】

『本町(もとまち)一丁目(いっちょうめ)』が近(ちか)づいてきた。【D】顔(かお)を上(あ)げると、他(ほか)の客(きゃく)は誰(だれ)もいなかった。降車(こうしゃ)ボタンを押(お)して、手(て)の甲(こう)で涙(なみだ)をぬぐいながら席(せき)を立(た)ち、ポケットから回数券(かいすうけん)の最後(さいご)の一枚(いちまい)を取(と)り出(だ)した。【E】

  バスが停(と)まる。運賃箱(うんちんばこ)の前(まえ)まで来(く)ると、運転手(うんてんしゅ)が河野(かわの)さんだと気(き)づいた。それでまた、悲(かな)しみがつのった。こんなひとに最後(さいご)の回数券(かいすうけん)を渡(わた)したくない。

  整理券(せいりけん)を運賃箱(うんちんばこ)に先(さき)に入(い)れ、回数券(かいすうけん)をつづけて入(い)れようとしたとき、とうとう泣(な)き声(ごえ)が出(で)てしまった。

「どうした?」と河野(かわの)さんが訊(き)いた。「なんで泣(な)いてるの?」――ぶっきらぼうではない言(い)い方(かた)をされたのは初(はじ)めてだったから、逆(ぎゃく)に涙(なみだ)が止(と)まらなくなってしまった。

「財布(さいふ)、落(お)としちゃったのか?」

  泣(な)きながらかぶりを振(ふ)って、回数券(かいすうけん)を見(み)せた。

  じゃあ早(はや)く入(い)れなさい――とは、言(い)われなかった。

  河野(かわの)さんは「どうした?」ともう一度(いちど)訊(き)いた。

  その声(こえ)にすうっと手(て)を引(ひ)かれるように、少年(しょうねん)は嗚咽(おえつ)交(ま)じりに、回数券(かいすうけん)を使(つか)いたくないんだと伝(つた)えた。母(はは)のこともしゃべった。新(あたら)しい回数券(かいすうけん)を買(か)うと、そのぶん、母(はは)の退院(たいいん)の日(ひ)が遠(とお)ざかってしまう。ごめんなさい、ごめんなさい、と手(て)の甲(こう)で目元(めもと)を覆(おお)った。この回数券(かいすうけん)、ぼくにください、と言(い)った。

  河野(かわの)さんはなにも言(い)わなかった。かわりに、小銭(こぜに)が運賃箱(うんちんばこ)に落(お)ちる音(おと)が聞(き)こえた。目元(めもと)から手(て)の甲(こう)をはずすと、整理券(せいりけん)と一緒(いっしょ)に百二十円(ひゃくにじゅうえん)、箱(はこ)に入(はい)っていた。もう前(まえ)に向(む)き直(なお)っていた河野(かわの)さんは、少年(しょうねん)を振(ふ)り向(む)かずに、「早(はや)く降(お)りて」と言(い)った。「次(つぎ)のバス停(てい)でお客(きゃく)さんが待(ま)ってるんだから、早(はや)く」――声(こえ)はまた、ぶっきらぼうになっていた。

  次(つぎ)の日(ひ)から、少年(しょうねん)はお小遣(こづか)いでバスに乗(の)った。お金(かね)がなくなるか、「回数券(かいすうけん)まだあるのか?」と父(ちち)に訊(き)かれるまでは知(し)らん顔(かお)しているつもりだったが、その心配(しんぱい)は要(い)らなかった。

  三日目(みっかめ)に病室(びょうしつ)に入(はい)ると、母(はは)はベッドに起(お)き上(あ)がって、父(ちち)と笑(わら)いながらしゃべっていた。会社(かいしゃ)を抜(ぬ)けてきたという父(ちち)は、少年(しょうねん)を振(ふ)り向(む)いてうれしそうに言(い)った。

「お母(かあ)さん、あさって退院(たいいん)だぞ」

  退院(たいいん)の日(ひ)、母(はは)は看護師(かんごし)さんから花束(はなたば)をもらった。車(くるま)で少年(しょうねん)と一緒(いっしょ)に迎(むか)えに来(き)た父(ちち)も、大(おお)きな花束(はなたば)をプレゼントした。

  帰(かえ)り道(みち)、「ぼく、バスで帰(かえ)っていい?」と訊(き)くと、両親(りょうしん)はきょとんとした顔(かお)になったが、「病院(びょういん)からバスに乗(の)るのもこれで最後(さいご)だもんなあ」「よくがんばったよね、寂(さび)しかったでしょ?  ありがとう」と笑(わら)って許(ゆる)してくれた。

「帰(かえ)り、ひょっとしたら、ちょっと遅(おそ)くなるかもしれないけど、いい?  いいでしょ?  ね、いいでしょ?」

  両手(りょうて)で拝(おが)んで頼(たの)むと、母(はは)は「晩(ばん)ごはんまでには帰(かえ)ってきなさいよ」とうなずき、父(ちち)は「そうだぞ、今夜(こんや)はお寿司(すし)とるからな、パーティーだぞ」と笑(わら)った。

6

  バス停(てい)に立(た)って、河野(かわの)さんの運転(うんてん)するバスが来(く)るのを待(ま)った。バスが停(と)まると、降(お)り口(ぐち)のドアに駆(か)け寄(よ)って、その場(ば)でジャンプしながら運転席(うんてんせき)の様子(ようす)を確(たし)かめる。

  何便(なんびん)もやり過(す)ごして、陽(ひ)が暮(く)れてきて、やっぱりだめかなあ、とあきらめかけた頃(ころ)――やっと河野(かわの)さんのバスが来(き)た。

  車内(しゃない)は混(こ)み合(あ)っていたので、走(はし)っているときに河野(かわの)さんに近(ちか)づくことはできなかった。それでもいい。通路(つうろ)を歩(ある)くのはバスが停(と)まってから。整理券(せいりけん)は丸(まる)めてはいけない。

  次(つぎ)は本町(もとまち)一丁目(いっちょうめ)、本町(もとまち)一丁目(いっちょうめ)……とアナウンスが聞(き)こえると、降車(こうしゃ)ボタンを押(お)した。ゆっくりと、人差(ひとさ)し指(ゆび)をピンと伸(の)ばして。

  バスが停(と)まる。通路(つうろ)を進(すす)む。河野(かわの)さんはいつものように不機嫌(ふきげん)な様子(ようす)で運賃箱(うんちんばこ)を横目(よこめ)で見(み)ていた。

  目(め)は合(あ)わない。それがちょっと残念(ざんねん)で、でも河野(かわの)さんはいつもこうなんだもんな、と思(おも)い直(なお)して、整理券(せいりけん)と回数券(かいすうけん)の最後(さいご)の一枚(いちまい)を入(い)れた。

  降(お)りるときには早(はや)くしなければいけない。順番(じゅんばん)を待(ま)っているひともいるし、次(つぎ)のバス停(てい)で待(ま)っているひともいる。

  だから、少年(しょうねん)はなにも言(い)わない。回数券(かいすうけん)に書(か)いた「ありがとうございました」にあとで気(き)づいてくれるかな、気(き)づいてくれるといいな、と思(おも)いながら、ステップを下(お)りた。

  バスが走(はし)り去(さ)ったあと、空(そら)を見上(みあ)げた。西(にし)のほうに陽(ひ)が残(のこ)っていた。どこかから聞(き)こえる「ごはんできたよお」のお母(かあ)さんの声(こえ)に応(こた)えるように、少年(しょうねん)は歩(ある)きだす。

  何歩(なんぽ)か進(すす)んで振(ふ)り向(む)くと、車内灯(しゃないとう)の明(あ)かりがついたバスが通(とお)りの先(さき)に小(ちい)さく見(み)えた。やがてバスは交差点(こうさてん)をゆっくりと曲(ま)がって、消(き)えた。

  (重松(しげまつ)清(きよし)『バスに乗(の)って』による。一部(いちぶ)改変(かいへん))

 

(注)回数券(かいすうけん)… 乗車券(じょうしゃけん)の何回分(なんかいぶん)かをとじ合(あ)わせたもの。ここでは、十回分(じっかいぶん)の値段(ねだん)で乗車券(じょうしゃけん)の十一回分(じゅういっかいぶん)をとじ合(あ)わせた冊子(さっし)。
かぶりを振(ふ)って… 否定(ひてい)の意(い)を示(しめ)して。

 

問一(といいち)   本文中(ほんぶんちゅう)に  ①表紙(ひょうし)を兼(か)ねた十一枚(じゅういちまい)目(め)の券(けん)  とあるが、これを言(い)い換(か)えた表現(ひょうげん)を本文中(ほんぶんちゅう)から九字(きゅうじ)でそのまま抜(ぬ)き出(だ)して書(か)け。
問二(といに)   本文中(ほんぶんちゅう)の  ②必死(ひっし)に唇(くちびる)を噛(か)んで我(が)慢(まん)した  を単語(たんご)に区切(くぎ)り、切(き)れる箇所(かしょ)に/の記号(きごう)を書(か)け。
問三(といさん)   本文中(ほんぶんちゅう)の【A】〜【E】のうち、次(つぎ)の一文(いちぶん)が入(はい)る最(もっと)も適当(てきとう)な箇所(かしょ)はどこか。A〜Eから一(ひと)つ選(えら)び、記号(きごう)を書(か)け。
         窓(まど)から見(み)えるきれいな真(ま)ん丸(まる)の月(つき)が、じわじわとにじみ、揺(ゆ)れはじめた。

 

問四(といよん)   次(つぎ)の   の中(なか)は、本文(ほんぶん)を読(よ)んだ池田(いけだ)さんと中川(なかがわ)さんと先生(せんせい)が、少年(しょうねん)の心情(しんじょう)について会話(かいわ)をしている場面(ばめん)である。
池田(いけだ)さん   「帰(かえ)り、ひょっとしたら、ちょっと遅(おそ)くなるかもしれない」という会話(かいわ)や、「両手(りょうて)で拝(おが)んで頼(たの)む」という行動(こうどう)から、河野(かわの)さんのバスに乗(の)りたいという少年(しょうねん)の思(おも)いが読(よ)み取(と)れるよ。河野(かわの)さんのバスに乗(の)るのを嫌(いや)だと思(おも)っていたのにね。
中川(なかがわ)さん   「そうだね。 ア かもしれないことに対(たい)する少年(しょうねん)の不安(ふあん)や悲(かな)しみの思(おも)いを受(う)け止(と)め、回数券(かいすうけん)を使(つか)わなくていいようにしてくれた河野(かわの)さんに、少年(しょうねん)は イ の気持(きも)ちを伝(つた)えたかったんだろうな。
池田(いけだ)さん   そうだよね。少年(しょうねん)は イ の気持(きも)ちを回数券(かいすうけん)に書(か)いて伝(つた)えることも、河野(かわの)さんから言(い)われたことを守(まも)ってバスに乗(の)ることもできて、「バスが走(はし)り去(さ)ったあと、空(そら)を見上(みあ)げた」ときは、大(おお)きな達成感(たっせいかん)を味(あじ)わっていたと思(おも)うな。
中川(なかがわ)さん   そのほかにも、「何歩(なんぽ)か進(すす)んで振(ふ)り向(む)くと、車内灯(しゃないとう)の明(あ)かりがついたバスが通(とお)りの先(さき)に小(ちい)さく見(み)えた。やがてバスは交差点(こうさてん)をゆっくりと曲(ま)がって、消(き)えた。」という二文(にぶん)に描(えが)き出(だ)されている、見(み)えなくなるまでバスを見送(みおく)る少年(しょうねん)の姿(すがた)から、 ウ ことに一(いち)抹(まつ)の寂(さび)しさを感(かん)じていることも読(よ)み取(と)れるよね。
先生(せんせい)   描写(びょうしゃ)に着目(ちゃくもく)して、少年(しょうねん)の心情(しんじょう)をしっかりととらえることができていますね。

 

(1)    ア に入(はい)る内容(ないよう)を、本文中(ほんぶんちゅう)から十五字(じゅうごじ)でそのまま抜(ぬ)き出(だ)して書(か)け。
(2)    イ に入(はい)る適当(てきとう)な語句(ごく)を、漢字(かんじ)二字(にじ)で考(かんが)えて書(か)け。
(3)    ウ に入(はい)る内容(ないよう)を、二十五字(にじゅうごじ)以上(いじょう)、三十五字(さんじゅうごじ)以内(いない)で考(かんが)えて書(か)け。ただし、母(はは)、河野(かわの)さん  という二(ふた)つの語句(ごく)を必(かなら)ず使(つか)うこと。

7

三(さん)

  次(つぎ)は、『浮世(うきよ)物語(ものがたり)』という本(ほん)にある話(はなし)【A】と、その現代語訳(げんだいごやく)【B】である。これらを読(よ)んで、後(あと)の各問(かくとい)に答(こた)えよ。句読点等(くとうてんとう)は字数(じすう)として数(かぞ)えること。

 

【A】

 

    自(じ)慢(まん)するは下手芸(へたげい)といふ事(こと)

 

  今(いま)はむかし、物(もの)ごと自慢(じまん)くさきは未練(みれん)のゆへなり。物(もの)の上手(じょうず)の上(うえ)からは、すこしも自慢(じまん)はせぬ事(こと)なり。我(われ)より手(て)上(うへ)の者(もの)ども、広(ひろ)き天下(てんか)にいかほどもあるなり。

  ある者(もの)、座敷(ざしき)をたてて絵(え)を描(えが)かする。白(しら)さぎの一色(いっしき)を望(のぞ)む。絵描(えか)き、「心(こころ)えたり」とて焼筆(やきふで)をあつる。亭(てい)主(しゅ)のいはく、「①いづれも良(よ)ささうなれども、この白(しろ)さぎの飛(と)びあがりたる、羽(はね)づかひがかやうでは、飛(と)ばれまい」といふ。絵描(えか)きのいはく、「いやいやこの飛(と)びやうが第一(だいいち)の出来物(できもの)ぢや」といふうちに、本(ほん)の白(しろ)さぎが四(し)五羽(ごわ)うちつれて飛(と)ぶ。亭主(ていしゅ)これを見(み)て、「あれ見給(みたま)へ。②あのやうに描(えが)きたいものぢや」といへば、絵描(えか)きこれを見(み)て、「いやいやあの羽(はね)づかひではあつてこそ、それがしが描(えが)いたやうには、え飛(と)ぶまい」といふた。

 

(『新編(しんぺん)日本(にほん)古典(こてん)文学(ぶんがく)全集(ぜんしゅう)  仮名(かな)草子集(ぞうししゅう)』による。一部(いちぶ)改変(かいへん))

(注)焼筆(やきふで)… 柳(やなぎ)などの細長(ほそなが)い木(き)の端(はし)を焼(や)きこがして作(つく)った筆(ふで)。絵師(えし)が下絵(したえ)を描(えが)くのに用(もち)いる。

 

【B】

 

    自慢(じまん)をするのは芸(げい)が未熟(みじゅく)だという事(こと)

 

  今(いま)となれば昔(むかし)のことだが、どんなことでもやたらに自慢(じまん)したがるのは、未熟(みじゅく)な者(もの)のすることだ。   は、何事(なにごと)においても少(すこ)しも自慢(じまん)したりしないものだ。それは、自分(じぶん)より技量(ぎりょう)のすぐれた者(もの)が、この広(ひろ)い天下(てんか)にいくらでもいることを知(し)っているからだ。

  ある人(ひと)が座敷(ざしき)を作(つく)って襖(ふすま)に絵(え)を描(えが)かせた。白(しら)さぎだけを描(えが)いて仕上(しあ)げるように注文(ちゅうもん)した。絵(え)かきは「承知(しょうち)しました」と言(い)って、焼筆(やきふで)で下絵(したえ)を描(えが)いた。それを見(み)て主人(しゅじん)が、「どれも一見(いっけん)よくできているようだが、この白(しら)さぎが飛(と)び上(あ)がっている、こんな羽(はね)の使(つか)い方(かた)では飛(と)ぶことはできないだろう」と言(い)った。絵(え)かきはもったいぶったようすで、「いやいや、この飛(と)び方(かた)が、この絵(え)のもっともすばらしいところなのだ」と言(い)っている最中(さいちゅう)に、本当(ほんとう)の白(しら)さぎが四(し)、五羽(ごわ)、群(むら)がって飛(と)んで行(い)った。主人(しゅじん)はこれを見(み)て、「あれを見(み)てください。あんなふうに描(えが)いてもらいたいものだ」と言(い)うと、絵(え)かきもこれを見(み)て、「いやいや、あの羽(はね)の使(つか)い方(かた)では、私(わたし)が描(えが)いたように飛(と)ぶことはできないだろう」と言(い)った。

 

8

問一(といいち)  【A】の  ①いづれも良(よ)ささう  の読(よ)み方(かた)を、全(すべ)て現代(げんだい)仮名(かな)遣(づか)いに直(なお)し、平仮名(ひらがな)で書(か)け。
問二(といに)  【A】の  物(もの)の上手(じょうず)  とは、どのような人物(じんぶつ)か。【B】の空欄(くうらん)   に入(はい)る語句(ごく)を、漢字(かんじ)二字(にじ)の現代語(げんだいご)で考(かんが)えて書(か)け。
問三(といさん)  【A】に  ②あのやうに  とあるが、何(なに)がどうする様子(ようす)かを具体的(ぐたいてき)に表(あらわ)す部分(ぶぶん)を、【A】からそのまま抜(ぬ)き出(だ)して書(か)け。
問四(といよん)  次(つぎ)の   の中(なか)は、【A】と【B】を読(よ)んだ青木(あおき)さんと小島(こじま)さんと先生(せんせい)が、会話(かいわ)をしている場面(ばめん)である。

 

先生(せんせい)   この話(はなし)の主人公(しゅじんこう)である絵(え)かきのどんな点(てん)が「下手芸(へたげい)」なのか話(はな)し合(あ)ってみましょう。
青木(あおき)さん   私(わたし)は、絵(え)についての主人(しゅじん)の感想(かんそう)に対(たい)して、「この飛(と)びやうが第一(だいいち)の出来物(できもの)ぢや」と言(い)って、  ア 点(てん)が「下手芸(へたげい)」であると思(おも)います。
小島(こじま)さん   私(わたし)は、実物(じつぶつ)を参考(さんこう)にせず「あの羽(はね)づかひではあつてこそ、それがしが描(えが)いたやうには、え飛(と)ぶまい」と言(い)い張(は)って、 イ 点(てん)も「下手芸(へたげい)」であると思(おも)います。
青木(あおき)さん   なるほど。どちらにしても絵(え)かきの ウ 心(しん)している点(てん)が、「下手芸(へたげい)」であるということができますね。
小島(こじま)さん   そうか。だから、絵(え)かきは、自分(じぶん)よりすぐれた人(ひと)が世(よ)の中(なか)にはたくさんいることに気付(きづ)くことができないのですね。
先生(せんせい)   二人(ふたり)とも、絵(え)かきの「下手芸(へたげい)」な点(てん)についてよく考(かんが)えることができましたね。

 

(1)    ア 、 イ に入(はい)る内容(ないよう)を、十字(じゅうじ)以上(いじょう)、十五字(じゅうごじ)以内(いない)の現代語(げんだいご)でそれぞれ考(かんが)えて書(か)け。ただし、 ア には他人(たにん)、 イ には自分(じぶん)という語句(ごく)を必(かなら)ず使(つか)うこと。
(2)    ウ に入(はい)る最(もっと)も適当(てきとう)な漢字(かんじ)一字(いちじ)を、【A】からそのまま抜(ぬ)き出(だ)して書(か)け。

9

四(よん)

  林(はやし)さんの学級(がっきゅう)では、食品(しょくひん)ロスの問題(もんだい)について、【資料(しりょう)1】と【資料(しりょう)2】を基(もと)に学習(がくしゅう)している。【資料(しりょう)3】は、学習(がくしゅう)の際(さい)に出(で)た友達(ともだち)の意見(いけん)である。これらを読(よ)んで、後(あと)の問(とい)に答(こた)えよ。

 

【資料(しりょう)1】食品(しょくひん)ロス削減(さくげん)についてのポスター

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(福(ふく)岡(おか)県(けん)啓発用(けいはつよう)ポスター  一部(いちぶ)改変(かいへん))

 

【資料(しりょう)2】  学習(がくしゅう)で用(もち)いる資料(しりょう)の一部(いちぶ)

  まだ食(た)べられるのに捨(す)てられてしまう食品(しょくひん)のことを「食品(しょくひん)ロス」といいます。日本(にほん)では年間(ねんかん)612万(まん)トンの食品(しょくひん)ロスが発生(はっせい)しています。

  年間(ねんかん)一人(ひとり)当(あ)たりの食品(しょくひん)ロス量(りょう)は,48kgにもなります。これは,毎日(まいにち),お茶(ちゃ)碗(わん)約(やく)一(いっ)杯(ぱい)分(ぶん)の食品(しょくひん)を捨(す)てていることと同(おな)じです。

 

《食品(しょくひん)ロス削減(さくげん)のポイント》

A 食品(しょくひん)の期限(きげん)表示(ひょうじ)を確認(かくにん)する

※  消費(しょうひ)期限(きげん):食(た)べても安全(あんぜん)な期限(きげん)

    賞味(しょうみ)期限(きげん):おいしく食(た)べることができる期限(きげん)
B 買(か)い物(もの),料理(りょうり),食事(しょくじ)をするときの量(りょう)を考(かんが)える
C 保存(ほぞん)や調理(ちょうり)の方法(ほうほう)を工夫(くふう)する

 

(消費者庁(しょうひしゃちょう)及(およ)び福岡県(ふくおかけん)啓発用(けいはつよう)パンフレットを基(もと)に作成(さくせい))

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【資料(しりょう)3】「食品(しょくひん)ロス削減(さくげん)のために自分(じぶん)にできること」についての意見(いけん)

 

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「食(た)べる前(まえ)に,全部(ぜんぶ)食(た)べることができる量(りょう)なのかを考(かんが)えて,料理(りょうり)を取(と)り分(わ)けるようにしたいです。」

 

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「どのくらいの食(た)べ物(もの)が必要(ひつよう)か,いつ食(た)べるのかなどを考(かんが)えて,買(か)うようにしたいです。」

 

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「調理(ちょうり)の前(まえ)に,食(た)べる人(ひと)の体調(たいちょう)や人数(にんずう)を考(かんが)えて、料理(りょうり)が余(あま)らないように,食材(しょくざい)を準備(じゅんび)したいです。」

 

問(とい)   林(はやし)さんは友達(ともだち)の意見(いけん)を聞(き)きながら、「食品(しょくひん)ロス削減(さくげん)のために自分(じぶん)にできること」を考(かんが)えている。あなたなら、どのように考(かんが)えるか。次(つぎ)の条(じょう)件(けん)1から条件(じょうけん)4に従(したが)い、作文(さくぶん)せよ。

 

条件(じょうけん)1   文章(ぶんしょう)は、二段落(にだんらく)構成(こうせい)とすること。
条件(じょうけん)2   第一段落(だいいちだんらく)には、【資料(しりょう)3】から共感(きょうかん)できる人物(じんぶつ)(誰(だれ)を選(えら)んでもかまわない。)を一人(ひとり)選(えら)び、その理由(りゆう)を【資料(しりょう)1】のimage00007.jpgの中(なか)にある三(みっ)つの言葉(ことば)のうち、一(ひと)つを用(もち)いて書(か)くこと。
条件(じょうけん)3   第二段落(だいにだんらく)には、第一段落(だいいちだんらく)を踏(ふ)まえ、あなたが考(かんが)える自分(じぶん)にできることを、【資料(しりょう)2】の《食品(しょくひん)ロス削減(さくげん)のポイント》のA〜Cのうち一(ひと)つと関連付(かんれんづ)けて書(か)くこと。なお、関連付(かんれんづ)けたポイントは、A〜Cの記号(きごう)で示(しめ)すこと。
条件(じょうけん)4   題名(だいめい)と氏名(しめい)は書(か)かず、原稿(げんこう)用紙(ようし)の正(ただ)しい使(つか)い方(かた)に従(したが)い、十行(じゅうぎょう)以上(いじょう)、十二行(じゅうにぎょう)以内(いない)で書(か)くこと。