高知みらい科学館
Kochi MIRAI Science Center
①「ウイルス」とは?
「ウイルス」は、風邪やインフルエンザ、水ぼうそう、おたふくかぜ、 はしかなどの感染症を引き起こす病原体です。「コロナウイルス」のほかに、「インフルエンザウイルス」や「ノロウイルス」などが有名ですね。
大腸菌などの「細菌」も、ウイルスと同じように感染症を引き起こす 小さな病原体ですが、「細菌」の大きさが、1~10μm(マイクロメートル) (1mm の 1/1000~1/100)くらいの大きさなのに対して、「ウイルス」 の大きさは、10~100nm(ナノメートル)(1mm の 1/100000~1/10000) くらいの大きさしかありません。
細菌とちがい、ウイルスに細胞はなく、生物 ではありません。
「細菌」は自分で増える(増殖する)ことが できますが、「ウイルス」は生物の体の中の細胞 に入らないと、増えることができません。
つまり、物の表面についたウイルスがどんどん 増えていくなどということはありません。
②「コロナ」とは?
「コロナ」とは、太陽のまわりの高温のガスの 部分のことで、「冠(かんむり)」という意味の言葉 です。
「コロナウイルス」は、この「コロナ」に形が 似ていることからつけられた名前です。
CGで描かれた新型コロナウイルス | 太陽のコロナ |
③「新型」とは?
ヒトに感染する「コロナウイルス」には、これまで、風邪のウイルス4種類と、「SARS(サーズ)コロナウイルス」、「MERS(マーズ)コロナウイルス」の合わせて6種類が知られていましたが、今回見つかった コロナウイルスは、これまでの6種類とは違う、新しいタイプだということで、「新型」といわれています。
今回の「新型コロナウイルス」は「SARS コロナウイルス2」という名前がつけられています。
「COVID-19」というのは、今回の新型コロナウイルスによる感染症につけられた名前です。
① ウイルスは体のどこから出てくるか
ウイルスは、感染した人が咳や会話をしたときに口から飛ぶ「飛沫(ひまつ)」に 含まれています。
感染した人の「手」からウイルスが出てくるわけではありません。感染した人が 咳やくしゃみを手でおさえたときなどに、手にウイルスがつきます。
② ウイルスはどこから体に入るか
ウイルスは、鼻や口、目の粘膜などから体に入るといわれています。
ウイルスを鼻や口から吸いこんだり、ウイルスがついた手で顔(目・鼻・口)をさわったりすることにより、ウイルスが体に入ってしまいます。
ウイルスが「手」から体に入るわけではありません。ただし「手」は、顔をさわったり、いろんなところ・いろんな物をさわったりすることにより、ウイルスを広げてしまうかもしれないため、注意しておく必要があります。
③ 感染・発症
ふつう、ウイルスが体に入ると、体は「免疫(めんえき)」というはたらきで、ウイルスが入った細胞をこわします。
一方、ウイルスは生物の体(細胞)に入ると、どんどん増えていきます。
体に入るウイルスの数が多くなると、免疫のはたらきが追いつかなくなり、「感染症」を引き起こします。
ウイルスによる感染症から身を守るには、体に入るウイルスの数を少しでも減らすことが大切になります。
④ 飛沫感染と接触感染
新型コロナウイルス感染の要因としては、「飛沫感染(ひまつかんせん)」と「接触感染(せっしょくかんせん)」の2つが考えられています。
「飛沫感染」は、咳や会話のときに口から飛ぶ「飛沫(ひまつ)」に含まれるウイルスをほかの人が鼻や口から吸いこんでしまうことによって起こります。
「接触感染」は、飛沫などによりウイルスがついた「手」から直接、または、ドアノブや手すり、エレベーターのボタンなどを通して、ほかの人の「手」にウイルスが移り、その「手」で顔(目・鼻・口)をさわることなどにより起こります。
①「3つの密」のこと
「3つの密」=「換気の悪い密閉空間」「多数が集まる密集場所」「間近で会話や発声をする密接場面」を避けるように言われているのは、主に「飛沫感染」を防ぐためです。特に、この3つの条件が重なると、飛沫感染(または直接の接触による接触感染)による集団感染が起こりやすいと考えられます。
反対にいうと、屋外または十分に換気されている屋内にいて、ほかの人と近づきすぎなければ、感染のリスクは減らせるといえます。
②「マスク」のこと
自分が感染している(ウイルスをもっている)場合、マスクをつけていると、飛沫が飛ぶことをおさえることができるので、周りに広げるウイルスの数を減らすことができます。
ほかの人の近くで会話などをするとき、マスクをつけていると、相手の飛沫を直接吸い込んでしまうのを、多少おさえることができるかもしれませんが、ウイルスの大きさは、一般的なマスクの網目よりもかなり小さいので、体に入るウイルスを防ぐ効果はあまりないといわれています。
ただし、今回の新型コロナウイルスの場合、症状がない感染者が多いといわれているので、知らないうち に自分が感染していて、ほかの人にうつしてしまうことを防ぐためには、やはり、マスクをしておくことが 重要です。
① 顔をさわらない
体に入るウイルスの数を減らすことにより、感染のリスクを減らすことができます。
ウイルスは鼻や口、目の粘膜などから体に入るといわれているので、ウイルスがついた(かもしれない)手で顔をさわらないようにするのがとても大切です。
② 手洗い
とはいえ、人は無意識に顔をさわってしまいます。マスクをしていると、顔をさわる回数も増えてしまうかもしれません。(直接、鼻や口にさわることは減るかもしれませんが。)
そのため、こまめに手を洗う必要があります。
せっけんで手を洗い、よくかわかすことにより、手についた多くのウイルスを洗い流すことができます。ウイルスをゼロにすることはできませんが、少しでも減らすことが大切です。
特に、いろんな人がさわるものにさわったあとは、顔にさわる前に手を洗いましょう。
また、いろんな人がさわるものにさわったあとに、例えばスマートフォンにさわったとしたら、それにも ウイルスがついているかもしれません。
ただし、ウイルスが物の表面などで増えることはありませんし、物についたウイルスは、ふつう、数時間 から数日で感染力を失いますので、あまり心配しすぎなくても良いかもしれません。
(新型コロナウイルスが物の表面で、どれくらいの期間、感染力を保てるかはまだわかっていません。)
③ アルコール消毒
手を洗ったあとのアルコール消毒、または、手を洗えないときに、手洗いの代わりにアルコール消毒をすることは、新型コロナウイルスに対しても有効だといわれています。手洗いと同じように、手の全体にアルコールをよくつける必要があります。
いろんな人がさわる物は、定期的にアルコールなどで消毒することで、ウイルスの数を減らすことができます。
① デマやうわさ
今回の新型コロナウイルスのように、多くの人が不安になるようなことが起こると、根拠のないデマやうわさが広まることがよくあります。人間は「わからないこと」による不安を解消しようとして、デマやうわさが生まれてしまうようです。
昔は、わからないことの多くは「妖怪のせい」にして終わっていたのですが、今は、わからないことに、それらしい理由をつけてデマやうわさが広まってしまいます。しかも、ここ数年は SNS が発達したため、デマやうわさが広まるスピードも速くなっています。「みんなのために」と思って、そのデマやうわさを広めてしまうということも起こっています。
② 新型コロナウイルスに関するデマやうわさ
今回の新型コロナウイルスの場合、「科学的っぽい」デマやうわさが広まっていて、その「科学的っぽさ」がそのデマやうわさの信頼度を高めてしまっているように思います。
例えば、「新型コロナウイルスは○○度で死ぬので、お湯を飲むと良い」、「花崗岩は放射線が出るので、新型コロナウイルスを殺せる」などです。いずれも、全く科学的根拠のない話です。
③ まどわされないために
デマやうわさにまどわされないためには、その情報が、正しい情報かどうか、信頼できる情報かどうかを見極めないといけません。
特に、インターネット上の情報は要注意です。テレビや新聞は、基本的には根拠のあるものしか出さないので、比較的信頼できます。
ただし最近は、テレビや新聞で「インターネットで ○○が話題になっています。」といったニュースや記事もあるので、注意が必要です。
インターネット上の情報でも、国や地方自治体、研究機関などが出している「科学的なデータ」や「事実 としての情報」は、信頼度が高いといえます。ただし、そのデータや事実をもとに発表されたものが、全て正しいとは限りません。間違った解釈や判断もあり得るからです。
複数の「メディア」や「発信元」からの情報は信頼性が高まります。1つのメディアや発信元からの情報だけだと、誤った情報や偏った考え方である可能性もあるからです。
また、テレビでも、ニュース以外の番組の情報は特に注意が必要です。1人の専門家だけの考えをもとにつくっている可能性があるからです。専門家とはいえ、1人の意見だと、やはり間違いや偏りがあります。
今、SNSなどで広まっているデマやうわさの中には、いかにも信頼できる発信元からの情報であるかのように書かれているものがあります。
その情報が正しいかどうか、信頼できるかどうかを判断するには、 情報の元を直接確認する必要があります。
「ウソかもしれない情報」に含まれている情報はウソかもしれないからです。
不安の中では、冷静な判断ができなくなってしまいます。こういった状況だからこそ、デマやうわさが増えることをふまえ、一度落ち着いて、「自分で情報を確かめるまで信じない」という心構えが大切かもしれません。
① 不安による偏見や差別
新型コロナウイルスの感染者やその家族、関係者のほか、病院で働く人たちや、運送などの仕事をする 人たちに対して、偏見や差別のようなことが起こっているようです。これは、ウイルスが目に見えないことから、不安になってしまい、必要以上におそれてしまった結果だと考えられます。
② 目に見えないウイルスをイメージする
ウイルスは目には見えませんが、「ウイルスは、感染した人の口から出て、手や物について広がり、目・ 鼻・口からほかの人の体に入る」ということがイメージできれば、必要以上におそれずにすみます。
人と会うときも、お互いマスクをしていて、短い時間で、その前後に手洗いをしていれば、感染のリスク を減らすことができます。
③ 自分の体も相手の体も守る
今回の新型コロナウイルスは、感染しても症状が出ない人も多いといいます。
誰もが、「自分も感染しているかもしれない」と考え、お互いに対策をすることにより、偏見や差別ではなく、「自分の体も相手の体も守る」ことを考えたいですね。
新型コロナウイルスは目に見えません。
目に見えないからこそ、不安があります。
しかも、今回のコロナウイルスは「新型」です。
たしかに、わかっていないことも多いです。
でも人間は、新型ではないコロナウイルスについてはよくわかっています。
それをもとに、今、世界中で、新型コロナウイルスの研究がすすんでいます。
私たちは、薬やワクチンをつくってくれるのを待つしかありません。
待っている間に自分や大切な人が感染しないために、
また、感染してしまう人を少しでも減らすために、
もし感染したとしても、亡くなってしまう人を少しでも減らすために、
私たちにできることをするだけです。
人ごみに行かないこと。
こまめに手を洗うこと。
人の近くに行くときはマスクをつけること。
私たちにできることをしながら、科学の力、人間の力に期待しましょう。
2020年4月12日作成 高知みらい科学館
Kochi MIRAI Science Center
Q&A
高知みらい科学館が制作したパンフレット「科学館が 科学の視点で わかりやすく伝える 新型コロナウイルス」について、本文で説明しきれなかった部分を補足するため、Q&Aを作成しました。
新型コロナウイルス対策の参考にしていただければ幸いです。
布マスクも含め、マスクには、咳や会話のときに口から出る飛沫が飛ぶのをおさえる効果があります。
ただし、布マスクに限らず、ふつうのマスクは、ウイルスを通してしまうので、入ってくるウイルスを防ぐことはできません。
新型コロナウイルスは症状のない感染者も多いといわれていることから、自分が感染していた場合、ほかの人にうつさないために、マスクをする必要があります。
マスクをしていても、「3つの密」の場所に行ってはいけません。
「3つの密」の場所では、空気中にウイルスを含んだ飛沫がただよっていると考えられます。
ふつうのマスクは、ウイルスを通してしまうため、「3つの密」の場所に行くと、ウイルスを吸い込んでしまうことになります。
いろんな人がさわる物は、ウイルスがついている可能性が高くなりますので、もちろん、さわらずに済むならさわらないほうが良いですが、日常生活ではそうもいきません。
本文にも書いたとおり、手からウイルスが入ってくるわけではありませんので、さわったあとに手を洗うことを心がけていれば、感染を防ぐことができると考えられます。
アルコール消毒よりも手洗いを優先に考えたほうが良いです。
せっけんで丁寧に手を洗うことにより、手についたウイルスの多くを洗い流すことができますので、手が洗えるときは、それで十分だといえます。アルコール消毒は手が洗えないときに手洗いの代わりに、または、手を洗ったあとに補助的に行うという考えで良いと思われます。
特に、アルコールに弱い方は、無理にアルコール消毒をせず、丁寧な手洗いをするほうが良いですね。
ウイルスが空間にただよっていると、感染のリスクが高まります。
しかし、消毒剤などを直接空間に吹きかけるのは危険です。ウイルスに強い消毒剤は、人の健康にも良くないことが多いからです。また、アルコールは引火してしまう危険性もあります。
ウイルスがただよっているかもしれない空間は、消毒しようとするよりも、換気して空気を入れ替えるのが良いと思われます。そもそも、ウイルスがただよわないようにするためにも、はじめから風通しの良い空間にしておくことが大切だといえます。
日々、各都道府県の感染者数が報告されていますが、日によって、また、都道府県によって、検査数が全く違いますので、1~2日で、増えた/減ったといって、一喜一憂するのはあまり意味がありません。ここ1週間と、その前の1週間を比べるなど、ある程度の期間で比べたほうが、傾向が分かります。
もちろん、人口の多い東京や大阪と比べて、感染者数が少ないからといって、「まだ大丈夫」などと考えてはいけません。さらに、同じ県の中でも一部の地域に感染者が集中している場合、その地域は、より感染拡大のリスクが高まっていると考える必要があります。
また、累積の感染者数には、すでに退院した人も含まれていますので、この数字は増え続けることになります。ある程度の期間で比べたときに、新しい感染者数が少なくなり、退院する人が増えてきたら、新型コロナウイルスは収束しつつあるといえます。
ただし、県内で新しい感染者が出なくなってきても、しばらくは感染者がゼロになることはありません。症状のない感染者も多いため、収まってきたからといって、油断すると、また感染者が増えてしまいます。
一度収まったように見えても、また、緊急事態宣言が解除されることになっても、「3つの密」を避ける行動や、こまめに手洗いすること、マスクをつけることは、しばらく続けるべきだといえます。
1人の感染者が、平均で1人未満の人にしかウイルスをうつさない状態が長期間続くと、感染者は減っていきます。反対に、1人の感染者が、平均で1人以上の人にウイルスをうつしている状態が続いてしまうと、感染者は増えていきます。
日本での調査結果によると、感染者のうち、約80%の人は、誰にもウイルスをうつしていなかった一方で、何人かの感染者は、1人から多くの人にウイルスをうつしてしまっていました。それらの例は、いずれも、いわゆる「3つの密」にあてはまる状態で起こっていたといいます。
このことから、みんなが、「3つの密」を避ければ、複数の人にウイルスをうつしてしまう例を減らすことができ、結果的に、感染者を減らしていけると考えられています。
ですので、今後、新型コロナウイルスが収まってきたとしても、「3つの密」にあてはまるような状況になると、また感染者が増えることになってしまうため、注意が必要です。
いくら気を付けていても、どんな人でも、感染することはあります。ウイルスは目に見えないからです。
新型コロナウイルスに感染した芸能人などが、謝っているのを見ますが、感染した人が悪いわけではないので、謝る必要はありません。ましてや、感染した人を責めるようなことはするべきではありません。
今回の新型コロナウイルスは症状のない人が多いといわれています。誰がかかっていてもおかしくありません。みんなが、自分もウイルスをもっているかもしれないと思って行動することが、お互いに感染するのを防ぐことにつながります。
このパンフレットは、科学の一般的な知識や、厚生労働省などが公開している情報を、高知みらい科学館が科学を伝えるプロとしての役割を果たすべく、「科学の視点で」「わかりやすく」ということを意識して制作したものです。当館が自ら制作したものですので、ご自由に印刷するなどしてご利用ください。
2020年4月26日作成 高知みらい科学館
Kochi MIRAI Science Center
マルチメディアデイジー図書製作:
オーテピア高知声と点字の図書館 2020年4月